空想リクライニング

お気に入りのいすに座ってボーッと空想して、気づいたこと

産学連携「中央研究所の時代」を超えて 西村吉雄

部長から借りた本です(笑)

産学連携発展の流れを順序立てて理解できる。古い本ですが、当時の日本の課題の多くは解決されないまま残っているということも再認識させられた(企業の新陳代謝の話など)。

自分的に覚えておきたいポイントをメモ。

  • 中央研究所型(基礎)研究開発
    • 性質として、社内に閉じこめられず、外に流出しがち(特に半導体の事例)
    • 投資回収率について、経済効果は従来より大きくなっているという声(ローゼンブルーム1998)
      • 社会全体にとっての回収率
      • 投資した当該企業にとっての回収率ではない
    • 複数の企業や業界全体に広く普及する研究成果ほど、投資回収率は高い。しかし、特定の一社だけで独占することは困難であり、企業収益と特定の研究成果とを直接結びつけることは難しくなっている。
  • 産学連携を欧米が重視するようになった理由
    1. シリコンバレーという成功モデルが確立しつつあった
    2. 本来オープンな組織である大学が、連携のプラットフォームとして相応しい
    3. 企業研究所から大学への研究者の移動が起こっていた
    4. 政府が大学への資金提供を縮小し、産学連携を誘導する政策をとった
    5. 政府資金減少に困った大学が、研究資金を産業界に求めた
    6. 特にバイオ分野で大学の研究成果が産業的に大きな意味を持ち始めた
  • 米国では、博士課程を終えたばかりの若者が、最先端の専門知識を産業界にもたらす。大学から企業へ、若者から年長者へと知識が流れる。日本では逆だ。企業内で先輩が新卒を訓練する。年長者から若者へと知識が伝わるだけである。これでは新しいアイディアは出にくいだろう。(フライ1995)
  • スタンフォード大やカリフォルニア大が特許のライセンス収入で儲かったというのは非常に強烈な成功事例として認識され、TLOの可能性を大学や社会へ認識させた。ただし本例(遺伝子組み換え技術)は例外中の例外として認識するべき。大学が産業界から得る資金の主体は、バイ・ドール法以前も以後も特許のライセンス収入などではない。委託研究費や共同研究費、あるいは研究のための寄付金などの方が大きい。こういう広義の産学共同研究から生まれる知的財産を効率よく透明に処理すること、結果として産業界が大学に安心して研究委託できるようにすること、これもまたTLOの役割として大きいと考える(著者)
  • 日本独特のシステム「系列システム」
    • 別企業であるが、人事と資金に関係のあることが多い。「市場の持つ効率性と組織のもつ安定性を同時にしかも低コストで実現したのが70年代以降の系列システムである(米倉1999)」
    • 他にも、町工場などに、得意技を活かし合う水平的な分業構造が発達している。これに情報通信ネットワークが加われば、日本の伝統的中小企業ネットワークが最も先進的なネットワーク分業へと発展する可能性があるのではないか。そして、そこにオープンプラットフォームとして大学が加わる。

産学連携

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